コニカＴＣ－Ｘ

コニカ最後の35mm一眼レフである。元々は欧米への輸出専用機だったが、売れ行きがいいので国内販売に至ったという経緯がある。ボディーのみで3万円という当時でも破格の安さだったが、大胆なコストダウンにより実現されたものである。ガワがプラスチックというのは昨今では珍しくもないが、安価なプラモデルというかモナカのような外装で、一眼レフとしてこれはどうなのと思えるほどのチャチな見かけである。それでも、相応の注目を集めたと見えて、アサヒカメラ1985年10月号のニューフェース診断室No.339において、本機が取り上げられている。それによると、レンズマウントからミラーボックスまではかっちりした金属構造で固められてピント精度を出す造りになっているほか、コニカ伝統のクイックリターンミラーのしゃくり上げ機構が採用されているということで、決して手を抜いて設計されたわけでは無いことが覗える。

廉価であることからニコンFM10、オリンパスOM2000といったコシナCT-1スーパーをベースとするコシナOEM機ではないかと推測する声もあるようだが、TC-XはX=1/60であるほか、コニカ伝統のミラーのしゃくり上げ機構が採用されているということで、CT-1スーパーをベースとするものではないだろう。少なくとも設計はコニカによるものと私は推測する。しかし、かつてカメラ雑誌におけるコニカ技術者の回顧録だったかで、「コシナから最終ロットのTC-X○○機が納品された」という下りを読んだ覚えがある。これが何というカメラ雑誌のいつの号に掲載されたものか、覚えておらず提示できないのは申し訳ない。

シャッターは1/1000から1/8までと割り切られた機械シャッターであり、ニューフェース診断室の測定ではかなりいい精度が出ていた。しかし、CdSを受光素子とするAE露出はややオーバー気味で、ネガカラー向きとされていた。私が中古入手した個体は、前オーナーの手入れが良かったのか、リバーサルで撮っても遜色ない露出であった。露出制御は機械的針押さえ方式で、当時でさえ既に旧式であったという。特筆すべきは電源が単4電池1本で済むことで、今でも入手が容易なのがいい。フィルムメーカー製らしく、DX対応なのもいい。

　電源スイッチも安っぽいが、ここまで徹底されるとむしろバランスがとれていていい。コストカットで廃止されそうなセルフタイマーも装備されている。

　ボデー底面には、単4電池の挿入口と、巻き戻しクラッチボタンとがある。

　背面にメモホルダーは無いが、フィルムの種別を判読する小窓が設けられている。

発売当時はズームヘキサノンAR35-70mmF4.0とのセット販売がされていたそうだが、私が中古入手した個体にはズームヘキサノンAR35-70mmF3.5-4.5が付いていた。どうもこのレンズはコシナのOEMっぽいんだが。このレンズだとスプリットプリズムが陰るので、私はヘキサノンAR35mmF2.8を入手することとなった。

シャッター　機械式縦走りフォーカルプレーン　1/1000～1/8、B　　X=1/60
露出モード　シャッター優先AE、マニュアル
露出計　CdS使用TTL中央重点測光、AE連動範囲はEV5～18
フィルム感度セット　ISO50～1600　DX対応
ファインダー　倍率0.87倍、視野率92％、スプリットマイクロマット式
電源　単4乾電池1本
大きさ重さ　130×84×44mm、375g
発売当時の価格　ボディーのみ30,000円、35-70/4付き62,000円、50/1.8付き48,500円