デジタル一眼レフで世界初の「実用的な」ライブビューを実現した傑作機
オリンパス Ｅ－３３０
コンデジではいわゆるライブビューが当たり前になっていたが、デジタル一眼レフでは発熱やAF機構と共存しにくいといった課題があり、実用的なライブビューはなかなか実現していなかった。単にライブビューというだけなら2004年発売の富士フイルムFinePix
S3 Pro が実現していたが、モノクロ表示しか出来ず、また、30秒ほどしか表示できなかったので、使い勝手はよくなかっただろう。そんな中、2006年にデジタル一眼レフで「実用的なライブビューを搭載して登場したのが、E-330である。
E-330がライブビューを実現できたのには、当時はフルサイズやAPS-Cでは実現困難で、フォーサーズだからこそ実現できたといえる理由がある。その一つは、イメージセンサーのサイズが小さく発熱が少ないことである。そのために大仰な放熱機構までは必要なく、ボディーサイズの肥大化を防げている。二つ目は、E-300が先鞭を付けたポロミラー一眼レフであることである。その光学系の活用により、ライブビュー専用のイメージセンサーを光学系に併存させることができている。これは、一眼レフに普通なペンタプリズムの光学系では、ほぼ不可能なことであろう。これらの優位さは、2010年にソニーからトランスルーセント・ミラー・テクノロジーによるα55とα33が登場するまでは、絶対的なものと思われた（ただし、これらソニー機は厳密には一眼レフではないのだが。）。
E-330のライブビューは、実は２つのモードが存在する。一つ目はＡモードと言われるフルタイムライブビューである。ポロミラー光学系から分光した光をライブビュー専用のイメージセンサー（CCDらしい。）に導き、そこから得られた画像を背面液晶に表示するものである。ミラー後ろのAF機構がそのまま活かせるため、ライブビューでありながら位相差AFが可能であった。この発想には、オリンパスの技術力の高さを誇らしく思ったものである。ただし、背面液晶に表示される画像の視野率は92パーセントに留まる。二つ目は、Ｂモードと言われるマクロライブビューである。ミラーは上がり、イメージセンサー（パナソニック製
Live MOS センサー）が直接光を受け、そこから得られた画像を背面液晶に表示するものである。まだイメージャAFが実用化される前のためAFは利かないが、視野率は100パーセントになる。ピント合わせはマニュアルになるが、画像を10倍まで拡大して表示できるので、正確なピント合わせに資するらしい。もっとも、フォーサーズ用レンズのMFはバイワイヤのため、MFによるピント合わせはしにくいのだが。
イメージセンサーは、E-1から採用されてきたコダック製CCDに換わり、パナソニック製Live MOS になった。従来採用してきたCCDに比べて消費電力を50％削減しているなどライブビューを考慮したものとなっているが、E-300やE-500の800万画素よりも画素数は少なく、750万画素である。当時の月刊カメラマンの付録冊子であったかで、「オリンパスは画素数が少なくなるほど値段が高くなる。」と評されていた。普及機E-500が800万画素、中級機E-330が750万画素、プロ機E-1が500万画素であったので、この逆転現象は興味深い指摘であった。それまでオリンパス機の特徴だった深い青色再現は「コダックブルー」と呼ばれていたが、E-330登場以降は「オリンパスブルー」と呼んで欲しいとされた（オリンパスの映像事業がOMデジタルソリューションズに移管された現在はどう呼べばいいのかCP+2024で聴いてみたが、説明員の人からは「今は青色を重視した色再現はしていません。」という回答だった。）。
ライブビューのＡモード・Ｂモードの切換ボタンがある。また、E-300やE-500では省略されたアイピースシャッターが復活した。
ファインダー光学系がペンタプリズムではなくポロミラーで、光は上ではなく横に曲げられる。ミラーは横にサイドスイングする。
背面液晶はチルト式で、ライブビュー時のノーファインダー撮影がしやすくなっている。
E-300に続きペンタプリズムによる頭がないため、内蔵ストロボをアップすると独自の姿となる。
発表時はけっこう注目されただろうE-330だが、それほど売れた印象はない。フィルム一眼レフの常識から脱却してデジタルならではの理想を追求したオリンパスだったが、続くE-400からはベーシックな一眼レフの姿に戻ってしまうこととなったのが、少々残念ではある（E-400は、その小型軽量さとOMシステム譲りのデザインとで注目を集めることとなるのだが。）。一方で、パナソニックがフォーサーズ規格に賛同してレンズ交換式デジタル一眼レフに参入し、その第1号となるDMC-L1は、このE-330をベースに開発されたものだった。さらには、DMC-L1のライカ版ともいうべきデジルックス3が発売され、E-330はフォーサーズ陣営の勢力拡大に大きく貢献したのである。これらE-330ベースの3機種は、その特異なデザインから求める人が多いようで、現在は中古市場ではほとんど出てこない希少性の高い機種となってしまっている（こんなことなら、現行機種の頃にもっと売れれば良かったのに。）。
